山陽本線網干駅西側には以前から網干電車区があり,主として東海道・山陽線(JR神戸線・JR京都線・JR琵琶湖線)を走る近郊型電車が配置され, 日常の点検が行われていました。
一方,全般検査・車両の改造などが行われていた鷹取工場が2000年3月末で閉鎖されることになり,網干にその機能を移されて2000年4月から網干総合車両所が発足しました。 そして,鷹取工場で毎年夏に行われていた「ふれあいフェア」(一般公開)が網干総合車両所でも2000年8月20日に第1回が行われ,近代的な検査設備が一般公開されました。
ふれあいフェア2000に参加して網干総合車両所を見学してきた内容をレポートします。
第1〜第3検修庫と入出場整備室が敷地の西側にあり,一部は検修庫の上部にも機器の検修場が配置された2階建て構造となっており, 面積的には鷹取工場よりかなり狭いようですが,効率的な配置となっています。 また,221系以降の新世代車両専用の検修ラインも設けられ,編成を組んだ状態で一斉に車体を持ち上げて台車を抜き取れるようになっているのは日本では初めてです。
メインとなる検修庫で,北側には8両まで編成を組んだ状態で一斉に車体を持ち上げて台車を抜き取れる自動昇降装置が2線あります。
各車両の両端にリフティングジャッキがあり,8両分のジャッキが同期して車体を昇降させることができます。
台車の位置にも独立して昇降する箱型のリフタがあり,入場時にはこの台車リフタも車体と同期して上昇します。
台車付で上昇させた後,今度は台車リフタを単独で下降させると車体から台車をはずすことができます。
台車リフタは箱型になっており,箱の底にもレールがあって,ここを別の台車が通れるようになっていて任意の台車を抜き取ることができるようになっています。
台車を車体に取り付ける場合は,取り外すときとは逆の手順になります。
この昇降装置は221系以降の新世代車両で使用するとのことです。
車体が下がっている状態 | 車体を持ち上げた状態 |
自動昇降装置の説明板から |
台車リフタ 箱型で箱の底と屋根にレールが敷かれており, いずれも台車が通ることができる。 |
自動昇降装置の南側は主電動機職場,台車職場などがあります。車輪の踏面を削って整形する車輪旋盤,超音波で車軸の傷の有無を調べる超音波探傷器などがあります。
今回,見ることができませんでしたが,さらに南側には塗装場,2階にも各種機器の検修職場があるようでした。
113系・201系などの旧世代電車,客車,気動車の検修庫で,従来どおり,1両ずつ切り離してクレーンで車体を吊り上げて台車を取り外したうえで検査するとのことです。
キハ120 304とオハネ14 302ほかが検修中 | 201系の車体をクレーンで吊り上げ移動実演中 |
仕業検査および交番検査などが行われるピット線などがあるようです。(今回の公開対象外)
こちらもピット線ですが,全般検査などで第1または第2検修庫に入場する前後に入線し,屋上機器の取り外し・交換・取り付けを行うとのことです。 このため,架線が設置されている中でクーラーおよびパンタグラフを取り外し,取り付けることができるように旋回できるクレーンが各線に2機ずつ設置されています。 また,2階にはクーラーおよびパンタグラフの検修場があり,旋回クレーンで取り外したものをそのまま2階へ移動させるための搬入口とクレーンもあるとのことです。
車体側の架線下へクレーンを旋回させて クーラーを吊り上げる準備 |
クーラーを吊り上げて横に旋回させた状態 |